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最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)1201号 判決 1966年2月03日

上告人(被告・控訴人) 岩野新三郎

被上告人(原告・被控訴人) 山田安三郎

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告人の上告理由第一ないし第三点について

原判決は、本件手形関係の原因債権に対する利息制限法所定の利率超過の利息支払の事実を認定しながら、任意に支払われた利息はそれが利息制限法に違反するものであっても元本債権に当然充当されるものとは解し難いとする見解(昭和三七年六月一三日大法廷判決民集一六巻七号一三四〇頁)に従って、右超過部分の元本充当による元本債権消滅をいう上告人の抗弁をすべて排斥して、右元本債権の残存額を一一九、三五九円と判定し、よって上告人は本件手形金中右の限度において被上告人に対し支払義務を負うべきものであるから、右の範囲内で上告人に一〇〇、〇〇〇円ならびにこれに対する昭和三六年一二月三一日より完済まで年六分の割合による金員の支払を命じた第一審判決は相当であるとしているのであるが、右大法廷判決は昭和三九年一一月一八日言渡の大法廷判決(民集一八巻九号一八六八頁)によって変更されていて、利息制限法所定の制限を超えて任意に支払われた利息の右制限超過部分は、民法四九一条により残存元本に充当されるものと解すべきであるとされているのであるから、これに反する原審の法律解釈適用は誤っているといわねばならず、その誤りは判決に影響を及ぼすこと明白である。

この点を指摘する上告論旨は理由があるから、違憲の論旨について判断するまでもなく原判決は破棄を免れない。ところで、原判決は、右制限超過の利息の各支払時期を認定判示していないから、右超過分の弁済充当によって元本残額の生ずる右時期を確定することができないので、この点を明確にして審理を尽くさせるため、民訴法四〇七条一項により、本件を原審に差し戻すべきものとし、裁判官入江俊郎の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官入江俊郎の反対意見は次のとおりである。

わたくしは、多数意見が引用する昭和三九年一一月一八日言渡の大法廷判決の示す法律解釈をとらないものであって、その理由は、同判決における反対意見として示したとおりである(民集一八巻九号一八八三頁参照)。従って、多数意見には賛し難く、本件上告は棄却すべきものと考える。

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠)

上告人の上告理由<省略>

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